飯豊連峰 門内小屋 小屋番日記(平成24年08月11日〜08月14日)  


1年振りに門内小屋の管理に入った。以前は胎内市と個人が委託契約をしていたが、昨年から任意団体である
『飯豊・胎内の会』を作りここが受託団体としての受け皿となり胎内市から管理業務を受託し管理する体制となった。

 石転ビ マツムシソウとマルハナバチ
   
 土砂流出場所にキンコウカが群生していた  植生ネットの成果・・・シッカリ根付いています
   
 ここはまだ、春の様相  雪が解けたばかりの所は春の花
   
 地神北峰の下で咲いていたイイデリンドウ ギルダ原〜北俣岳への道
   


期   間    平成24年08月11日〜同14日
今年はボクの管理期間については、天候が不安定でなかなか、気持のよい晴天が終日続くこともなく
上空の寒気などの影響で、ボクの管理期間を通じて気温も低めで最低14℃〜最高17℃位で推移していた。

08月11日(土)
コースタイム
01:00 自宅発 コンビニで買い物 予定より少し遅めの出発。
02:30 天狗平発(420M)
03:15 楢の木曲がり(720M) 汗はかくものの、気温も低めで時折、風が吹いて体温コントロールに関しては楽である。
04:15 湯沢峰着(1,020M) やや荷物の重量があるのでユックリ目というか、こんなものか?藪蚊、ブヨの大群・・・コンチクショウ。食事。
05:00 滝見場(1,145M) 
05:50 五郎清水(1,370M) 水汲み、食事・・・登山道からの下りやや藪っぽい。ホンモノ五郎で給水
06:40  三本樺(1,540M) 給水。
07:12 梶川峰着(1,700M) 食事・・・登山道脇の笹、不愉快
08:07 扇ノ地紙(1,869M)  上部ガリー浸食地の観察
08:20 門内小屋着(1,865M) 交代の清倉氏(新発田山岳会)は、水場に出た様子
気温が低めで歩き易いと思いつつも、なんだかんだで6時間ペースか・・・
荷物の重めとはいえ、遅いなぁ・・・体力的に楽だったといえばそうだけれど・・・



08月14日(火)
12:00 門内小屋発(1,865M)・・・小屋でカレーライスとラーメンの昼食をとってから下山。
12:11 扇ノ地紙(1,869M)
12:34  梶川峰着(1,700M)・・・ 梶川尾根上部でニュージェックの川端さん、梶川峰で所属会の新井田君と立ち話。
12:45 三本樺(1,540M)・・・・・・合羽を脱いで気分良い
12:57 五郎清水(1,370M)・・・・さすがに暑い
13:15 滝見場(1,145M)
13:37 湯沢峰着(1,020M)・・・・給水
14:27 天狗平着(420M)・・・・・天狗平ロッジの管理人当番の竹爺とバッタリ
16:30 自宅着・・・・・・・・・・・・・急ぐ用事もないので大石ダムに車をデポした単独者を大石ダムまで送って帰宅。


概要
飯豊・胎内の会で管理を行っている門内、頼母木の避難小屋小屋管理。今年は、お盆休み期間に門内岳避難小屋の管理に入った。


記録

8月11日(土)
0時を少し過ぎて起床。睡眠時間はあまりとれないが、それでもグッスリ寝たので案外サワヤカ。
シャワーを浴びて、車に荷物を積み込み自宅を出る。途中、コンビニで行動食を購入して天狗平を目指す。

2時少し前に梅皮花荘への分岐となる大淵のゲート着。ここで靴以外の身支度を整える。天狗平の駐車場で前泊の方がいらっしゃると
ドアの音がバタバタして煩いだろうから、夜中出発の際にはこうしている。
2時20分天狗平P着、案外駐車車両が少ない。
2時30分、ヘッデンを点けて出発。

さて、登るか・・・・出だしの急登にジックリととりかかる。
ユックリ進む。少し登ると滑りやすい、一枚岩のロープが下がっている場所に来た。そこからわずかに登ると、登山道脇に数個の石が
重ねてある。おそらく、これが、先月末の遭難事故の際の目印だろう。ユックリ登って「ナラの木曲がり」。
一息入れて空を眺めると、やや雲が多いものの星空に月。

湯沢峰で、食事。ブヨ、藪蚊に襲われる。

水もあまり近くにないのになぜだろう?
湯沢峰を出てしばらくしてからヘッデンを消してノンビリと歩く。
今日は、ヘッデン目がけて飛んでくる不快な虫も少ないし、蜘蛛の巣も少ない。そして小動物の気配もほとんど感じない。
驚かないけれど少しさびしい気もする。湯沢峰の少し先でヘッデンを消す。

五郎清水で食事と給水。
ここまで水は1L消費しているが、シャツはあまり濡れずに快適。今日に限っては気温が低めで、風もあるからだろう。
五郎清水への下りは笹が邪魔で少し判りにくいかもしれない。また、下り終えると今度はアザミが伸びている。
手前の『ニセ五郎』は水がやや細く、奥の『五郎清水』で水を汲むが、岩の周辺のアザミが繁茂していて判りにくいかもしれない。

徐々に樹高が低くなりブナ等がなくなり灌木帯となる。通称『三本樺』
顕著なダケカンバの樹が5〜6本位ある所で、標高1,540m付近である。登山口から標高差で1,000m強の位置。ここから上部の植生は三本樺から
ケルン付近までは灌木と笹で、ケルンから上部は雪田草原となる。いずれにしても天候の悪い時はここから上部では厳しい条件となる。
そして、『三本樺』を過ぎると、傾斜が落ちて笹藪の間を通って、やがて梶川峰へ。

梶川峰で食事。ここから、門内小屋までは1時間少々で目途がつく場所。ここから先は大きな標高差がないので、涼しい風に吹かれながらの歩きで
気分がよい。梶川尾根上部のガリー浸食地を眺め歩行走路と水道の位置関係過去の処置の技術的な問題点、考え方と実際の相違等を
自分なりに考えながら写真を撮ったり考えながら歩いた。

扇ノ地紙でT字路となる主稜線に出る。主稜線で進路を南へ。ここまでくると門内小屋は指呼の間。
門内小屋に到着するが、ボクと交代で下山する清倉氏は冷却用の雪塊を採りに行った様で不在。汗で身体が冷えるので小屋本棟で着替え。

ほどなく、清倉氏が戻って来て、9時の定時連絡をして引き継ぎ及び下山準備をして石転ビ経由で下山するという。

準備が整うと、一瞬強い雨が通り過ぎてった。雨とともに清倉氏は下山の途についた。

さてと・・・・先ずは自分のアマ無線機を外部アンテナに取り付けてみる。コネクターが合うか心配していたけれどOKだ。
小国市街地と梅皮花小屋、天狗平ロッジの交信が入る。御西小屋のWZL(ケンちゃん)を呼んで取りあえずの着任連絡。

新潟県消防防災航空隊から訓練を予定しているとのことで、天候確認の電話あり。
会の先輩であるOIIさんから無線で足ノ松尾根から登り、現在、大石山。明日の天候に不安があるので先にエブリまでピストンしてから
門内に向かうとの連絡。

同窓のサイトウ君が御西を目指し、ダイグラの橋が無いので明日戻って来たいと話し通過していった。
昼食後、前任の清倉氏が融雪水を採っていた雪渓の雪がここ数日の強風で融けてしまい厳しい。と話していたので、様子を観に行く。

午後だというのに、取水口からは水も得られず、上部の雪も極僅かである・・・・こりゃもう駄目ですなぁ・・・・
その足で、秋の水場である門内清水を観に行く。上部のシュルンド状になっている所からわずかに下って様子を見たけれど雪の厚みがあり
とても、ここ数日で開く期待が持てない。小屋の天水タンクも極僅か。こりゃまとまった雨がなければかなり厳しい。
てんで、『飯豊・胎内の会』の事務局へ連絡しインフォメーション等の対応、門内の水対応策をお願いした。

事務局指示で明日、頼母木からペットボトルの水を移動させることで、頼母木小屋と調整して欲しいとのこと。
そんなこんなしているウチにOIIさん到着。

ゲストを含め四方山話に花が咲いた。



8月12日(日)
天気予報では今日も、不安定なお天気とのこと。
OIIさんも予定より早めの出発。朝方、パラッと降ったもののお天気は現在回復傾向でまだ、持ちそう。
新潟県消防防災航空隊から電話、昨日と同様の現状の気象状況の問い合わせ。
頼母木小屋の石川氏は9時の定時交信後、頼母木小屋を出るとのことで、概ね地神山付近での受け渡しとなりそう。
ボクも、9時少し過ぎに門内を出る。
09:12 門内小屋発
09:33 扇ノ地紙
09:50 地神山
10:00 石川氏と水の受け渡し
11:00 門内小屋着
この間、頼母木山方向、門内岳方向でヘリの音が聞こえていたけれど、ガスで見えなかったが多分、昨日来の消防防災航空隊の訓練飛行と思う。
お天気の中、イイデリンドウも見つけたし、軽く汗もかいて爽快。

朝方の雨も強めに降ったものの、ごく短時間で雨もあがり天水タンクの状況を改善するまでに至らず。
冷却用の雪塊を門内清水を覆っている雪渓へ採りに行く。道具はハンマーとバール。先ずは雪塊をハンマーとバールで叩いて割り切り出す。
ザッと4〜5キロか?
それから、上流側の穴から雪の厚さを確認して落ちそうもないので上を渡り、門内清水のありそうな場所を少し叩いておく。
何もしないより雪解けは少し手を加えることで早く融けることが期待できる。

午後になり同窓のサイトウくんが門内に戻ってきた。
新発田の若い男性とサイトウ君と夜空を眺めたけれど、雲が邪魔で流星群は観ることができなかった。



8月13日(月)
WCの掃除やら、何かしていると、どうも胎内側の下部でヘリの様なエンジン音がする。
昨日訓練飛行したのにまた、今日もかな?そう思うが何だか同じ様な場所で聞こえるしかなり長時間だ。

遭難事案かな?そんなことも思う?
昼前にサイトウくんも下山して行った。
それに先立ち、九州からの登山者もエブリに向かい出発していった。
午後から前線が南下してくる予想。明日も予報が悪いので外に出られない可能性も考えて、ある程度の大きさの冷却様の雪塊を採りに行く。
昨日に同様に先ず冷却用の雪塊を採り、また、門内清水の上部と思われる場所にバールを打ち込む。
腕がパンプするまで何回も打ち付ける。

午後からは風が強まる日本海の前線の南側に位置したのか前線南側の強風帯(下層ジェット)に入った様だ。
風速は20m位でている。雨は激しくはないものの気温は16℃位なので、静止状態では体感的には0℃以下になる
ハズで低体温症の危険が十分にある範疇である。こうなると、案外、人が泊まるのが門内小屋。

それは、稜線で風雨に捕まり梅皮花小屋、あるいは反対の頼母木小屋へ行く計画を変更する人
梶川尾根を登り稜線で風雨に驚き前進をやめた方が多数入るためである。

何度か本棟へ行く。目的は、西側の窓廻りの雨漏りが心配なためである。
2回目に巡視にいくと、染み込んできていた・・・ただ、以前のようにバシャバシャになることはないようである。

19時近くに本日最後の宿泊者が入る。
聞けば、前泊で飯豊山荘とのこと?前泊で飯豊山荘でどうして19時近くになるかなぁ?
前泊なら午前中に出るだろうに????かなり身体は冷えていたように見受けられた。

夕方から一旦風雨収まるが21時頃から激しい雷雨と強風。
日付を跨いで概ね3時過ぎまで、賑やかな夜だった。
0時頃までは寝たり起きたり。しかし、あまりの煩さにあきらめて明りをつけて、ラジオをつけて酒を飲み始めた。
ところが、酒を飲めば、WCに行きたくなる。
慣れている場所とはいえ、やや小屋外にでることが躊躇われる程の風雨だ。

合羽を着て長靴を履いて小用を足しに行く。何だか厳冬期のテント泊みたいだなぁ・・・・
小屋の風当たりの弱い処で体制を整え、風の息を見計らい移動する・・・・めぇったなぁ

薄明かりで気持良くなりウトウトして、明りとラジオを消すと、また風の爆音。
もう、いいやってんでナスがママ、キュウリがパパ。


8月14日(火)
寝不足の朝、収まったものの小雨の朝。施設に被害がないか確認に出る。幸い被害はない。
天水タンクが満水でオーバーフローしている。先ずは一安心だ。これで水質も改善される。

朝食を食べたら急に眠くなる。少しウトウトしてWC・本棟の清掃をする。

10時30分前交代のLOM到着・・・梶川尾根下部で大分雨に降られたようで、途中で嫌になったよ。と話していた。
寒くなるので早々に着替えてもらい、引き継ぎを行う。
行動食を持つのも面倒なので、小屋でカレーライスとインスタントラーメンを食べて
12:00に門内小屋を離れる。

朝の雨でしばらくは草の露で濡れるので合羽を着て下山するも、蒸れて暑い。
梶川尾根上部を下ると、上部のがリー浸食地に川端氏。どうやら翌週の下見の様子。仕事とはいえ、情熱がすごい。

梶川峰まで下ると人影が2名。
当会の新井田君だ。汗びっしょり。明日、御西か大日まで足を伸ばしたいとのこと。

三本樺で合羽を脱いだ。あ〜さっぱり
五郎清水、滝見場を通過して。湯沢峰で給水。
ここまでくると、空は青く、かなり暑い。

楢の木曲がりの少し下で、ぷ〜んとキノコのいい香りが・・・
登山道にザックを放り、藪に突入。
そこには、朽ちたトンビが・・・あっちゃあ〜
付近を丁寧に捜すと、2個の朽ちたもっと状態の悪いトンビが・・・
残念至極・・・・・

失意のままトボトボ下り、湯沢の橋を渡ると、竹爺の姿。
天狗平ロッジの管理に入っていたとのこと。
朽ちトンビの話をして着替えて、梅皮花荘で風呂入る。

風呂で大石ダムに車をデポした人に出合い大石ダムにその方を送り帰途についた。

まもなく、短い常駐管理期間を終えて飯豊の稜線はすぐに草紅葉につつまれる。




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